万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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但馬皇女の高市皇子の宮に在(いま)しし時に、穂積皇子を思(しの)ひて作りませる御歌一首

秋の田の穂向(ほむき)の寄れるかた寄りに君に寄りなな言痛(こちた)くありとも

巻二(一一四)
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秋の田の稲穂が風になびきかた寄るように心をなびかせて君に寄りたい。人々にどんなに悪くうわさされようとも。
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この歌は但馬皇女(たぢまのひめみこ)が穂積皇子(ほづみのみこ)に贈った恋歌の内の一つです。
この歌から三首の但馬皇女が穂積皇子に贈った歌が続いているので、歌物語的な要素もあるようですね。

穂積皇子と但馬皇女はどちらも天武天皇の子で、異母兄妹です。
この当時は母親の異なる兄弟同士の結婚は認められていたので、この二人が恋をすることも普通のことでした。

ただ、どうもこの二人に関しては他の理由などで周りから認められない恋仲ではあったようですね。
題詞にあるようにこのころ但馬皇女は高市皇子(こちらも天武天皇の子で但馬皇女や穂積皇子と異母兄弟)の宮で暮らしていたようです。
一説によると但馬皇女と高市皇子は夫婦であったともいわれているようですが、そう解釈するとこの穂積皇子との恋は不倫の関係になりますね。

また、高市皇子と但馬皇女には十五歳ほどの年齢差があることからして、夫婦ではなく父のような保護者だったとも考えられます。
もし高市皇子と夫婦でなかったと解釈した場合は、親の目を盗んで愛しい人に逢いにゆく女性といった感じでしょうか。

どちらにしても但馬皇女には世間の常識に背いてでも恋に生きようとする少女的なイメージがあって、どこかそれゆえに応援したくなるようなそんな魅力を持った女性のように思います。

この歌でも、誰にうわさされようとも秋の田の稲穂が寄りそうようにあなたにずっと寄り添っていたいという、なんともいえない一途な乙女の恋心が見事に詠われていますよね。
<穂>積皇子に贈る恋歌として穂積皇子を連想させる稲<穂>を題材にしているところなども非常に上手く、歌の才のある女性だったようですね。


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万葉集巻二


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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