万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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但馬皇女の高市皇子の宮に在(いま)しし時に、竊(ひそ)かに穂積皇子に接(あ)ひて、事すでに形(あら)はれて作りませる御歌一首
人言(ひとごと)を繁(しげ)み言痛(こちた)み己(おの)が世にいまだ渡らぬ朝川渡る
巻二(一一六)
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人がうわさするのでわたしは生まれてはじめて夜明けの川を渡り帰ります
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この歌も先の二首と同じ但馬皇女(たぢまのひめみこ)が穂積皇子(ほづみのみこ)に贈った歌の一つです。
ただ、これまでの歌ですでに解説しましたが、なんらかの理由でこの二人の恋は周りからは認められない悲恋であったようですね。
この当時は宵に男性が女性のもとへ通うのが普通でしたが、この歌では女性である但馬皇女が穂積皇子のもとに通い、人に気づかれないように明け方の川を渡って帰ったと詠んでいます。
なんとも積極的で大胆な女性といった感じですね。
これほどに但馬皇女に愛されたにもかかわらず、穂積皇子から但馬皇女に贈った恋歌が一首も残っていないのは穂積皇子も高市皇子ほどではないとは言え年齢的に上でありある程度大人の判断の出来る人であったということでしょうか。
この後、但馬皇女は亡くなってしまうのですが、「降(ふ)る雪はあはにな降りそ吉隠(よなばり)の猪養(ゐかひ)の岡の寒からまくに」(降る雪はそんなに積もらないでくれ吉隠の猪養の岡に眠っている但馬皇女が寒いだろうから)万葉集巻二(二○三)と穂積皇子が詠っています。
なんとも切なく愛情のこもったこの歌から読み解くに、但馬皇女のようにあからさまに表には出さなかったものの、きっと穂積皇子も但馬皇女のことを心から愛していたのでしょうね。
国道165号線沿い、桜井市出雲の初瀬川の淵にあるこの歌の歌碑。
車の通りの多い国道165号線の脇(出雲の陸橋の少し西ぐらい)にひっそりと建っています。
(写真では大きく見えますが、実際にはかなり小さいので気付く人もあまりいないようです)
歌碑の後ろを流れる初瀬川(大和川)。
但馬皇女もこんな川を渡ったのでしょうか…
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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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