万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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家にあれば笥(け)に盛る飯(いひ)を草枕(くさまくら)旅(たび)にしあらば椎(しい)の葉に盛(も)る

巻二(一四二)
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家にいたなら食器に盛って食べるご飯を、草を枕にする旅の途中にあるので椎の葉に盛って食べているよ。
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この歌も先の巻二(一四一)とおなじく有間(有馬)皇子事件のときに謀反の企みが露見したとして、有間皇子が中大兄皇子のいる行幸先に尋問を受けるため移送されるときに詠んだ一首です。
歌意としてはそのまま、旅の途中なのでご飯を盛る食器もなく椎の葉に盛って食べているというだけのことですが、家に残してきた妻を思い出し語りかけている思慕の歌でもあるようです。
この時代、旅に出た者の安全を願って家に残った妻や恋人は家の守護霊などに夫の無事を祈る歌を詠みました。
そして旅ゆく者もまた、家に残してきた妻や恋人にこころを寄せる歌を詠んで、旅の不安や動揺をおさめました。

この後の自分の運命を思い、旅の途中のただでさえみすぼらしい食事がよりいっそう惨めに感じながら、有間皇子も家に残してきた妻を思うことで心の不安をおさめたのでしょう。


椎の葉。


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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