万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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天皇の鏡王女(かがみのおほきみ)に賜える御歌一首

妹(いも)が家を継(つ)ぎて見ましを大和(やまと)なる大島の嶺(みね)に家もあらましを

巻二(九一)
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君のいる家を見続けていたいなあ。大和の大島の山に君の家があればいいのに。
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この歌は近江宮から難波に行幸していた天智天皇が、近江に残してきた鏡王女(かがみのおほきみ)に贈った一首です。
大和の大島の山は、信貴山の西にある高安の山でしょうか。
難波からは大島の山は遠くに見えるけれど近江の宮までは見ることが出来ないために、愛しい鏡王女のいる家が大島の山の上にあればいいのに…との慕情を詠った一首ですね。
家に残してきた恋人を想うことで旅先の不安を鎮めようとの想いが深く感じられる歌ですが、それを別にしてもせめて愛する人のいる家だけでも見たいとの想いは今の時代の人間にも充分に伝わる感情ですよね。

鏡王女は謎の多い人物ですが、一説によると額田王(ぬかたのおほきみ)の姉だと言われています。
また、その名から鏡王の娘であるとか、はたまた舒明天皇の皇女であるという皇族説もある女性です。
どちらにしても万葉集に残された相聞の歌などから、額田王にも劣らぬ美貌と歌の才のある女性だったことがうかがわれます。

天智天皇は鏡王女の妹である額田王の夫でもありましたが、この時代は姉妹でひとりの男性の愛情を受けることはべつに不自然なこととは感じられていませんでした。
(額田王にしても、もともとは大海人皇子の妻だったのが、やがて大海人皇子の兄である天智天皇の妻になったような時代ですので^^;)
ただ、これほど熱い想いのこもった歌を贈った天智天皇の鏡王女に対する愛もやがては醒めて、妹の額田王のほうに想いが深く移っていったようです。
そのあたりのことについてはいずれまた巻四の歌などで…


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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