万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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天皇の志斐(しひ)の嫗(おみな)に賜(たま)へる御歌(みうた)一首

不聴(いな)と言へど強(し)ふる志斐(しひ)のが強語(しひがたり)このころ聞かずて朕(われ)恋ひにけり

巻三(二三六)
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もう聞きたくないと言っているのに無理強いする志斐の強語りだけれど、このごろは聞かないので久しぶりに聞きたくなったわ
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この歌は持統天皇が中臣志斐に対して詠んだ戯れの一首です。
持統天皇についてはすでに何度もふれましたが、中臣志斐はその世話役の女官の一人でしょうか。
嫗(おみな)とは若い女性の意味なので、乳母などとは少し違うのでしょう。

この歌ではその中臣志斐がいつも無理に聞かせようとする物語を、最近は聞いていないので久しぶりに聞きたくなったのだと持統天皇が中臣志斐に向かって詠い掛けています。
「強い語り」とは本来、「こじつけ話」のことなのですが、持統天皇はもちろん知った上で、中臣志斐の名前の志斐(しひ)の語りに掛けて戯れているわけですね。

歌のやりとりから、かなり親しい関係が想像できますね。
次に紹介しますが、持統天皇のこの歌に対して中臣志斐が返した返歌も万葉集に収められています。
それにしても、この二首はなんとも人間らしさが感じられ、まるで目の前で持統天皇と中臣志斐のやりとりを聞いているかのようなそんな錯覚すら感じさせられますよね。

千三百年以上も経った現代に、当時の人のこころをここまでありありと伝えてくれる歌の力にあらためて驚かされます。


藤原京資料室にある藤原京の模型。
この持統天皇と中臣志斐の歌も藤原京で詠まれたものでしょう。



藤原京跡のすぐ横にある藤原京資料室。
大極殿跡の道を挟んだ西隣、JA奈良県橿原の二階にあります。
(見学は無料)


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万葉集巻三の他の歌はこちらから。
万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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