万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


大后の御歌一首

鯨魚(いさな)取り 淡海(あふみ)の海(うみ)を 沖放(さ)けて 漕(こ)ぎ来る船 辺(へ)附きて 漕ぎ来る船 沖つ櫂(かい) いたくな撥(は)ねそ 辺(へ)つ櫂 いたくな撥ねそ 若草の 夫(つま)の 思ふ鳥立つ

〔舎人吉年〕

巻二(一五三)
-----------------------------------------------
鯨を取るような淡海の海を沖遠く漕ぎ来る船よ。岸辺に付きて漕ぎ来る船よ。沖で櫂をそんなに撥ねないでください。岸辺で櫂をそんなに撥ねないでください。若草のようだった夫が愛おしんだ鳥たちが驚いて飛び立ってしまいます。
-----------------------------------------------

この歌も天智天皇が亡くなったときに大后が詠んだ挽歌です。
この大后は倭大后(やまとのおほきさき)のこと。

鯨を取るような大きな淡海の海の沖や岸辺近くを行く船に向かって、「そんなに櫂を撥ねないでください。天智天皇の愛しんだ鳥が飛び立ってしまいます。」と訴えかけている内容がなんとも読む者のこころに響いてくるような長歌となっています。
ただ、この歌ももちろん、実際に舟の漕ぎ手に訴えているのではなく、天智天皇の愛しんだ鳥たちを見ることで天皇の魂を近くに感じその魂にいつまでも飛び去らないで側にいてほしいと訴えているわけですね。
今の世でも、亡くなった人の形見や大切にしていたものを見るとその人のことを思い出しその人を近くに感じることがあることと思いますが、万葉に時代の人々の感受性はさらにするどくその魂の存在を感じ取っていたのでしょう。
そんな、この時代の人々が死者の魂というものの存在をどれほど身近に感じていたかがよく分かる一首だと思います。


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2014 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販