万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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磯の上に生ふる馬酔木(あしび)を手折(たお)らめど見すべき君がありと言わなくに

巻二(一六六)
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岸のほとりに咲く馬酔木を手折って君に見せたいと思っても、見せてあげる君に会ったとは誰も言ってはくれないよ。
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この歌も謀反の罪で処刑された大津皇子を偲んで、姉の大伯皇女が詠んだ歌のうちの一首。
この歌はちょっと解釈が難しいかも知れませんね。
この当時、誰かが亡くなったときに、その人が夢に出てきたり、ふと気配を感じるときにはその人の魂がそこにいるのだと信じて、その人の「魂に会ったよ」と言って肉親の人を慰める風習がありました。
しかし大津皇子は罪人として処刑されたので、その無念の魂に会ったということは国家に対する不吉なこととして誰もそのようには言ってくれなかったのです。

岸辺に咲く馬酔木の花を手折ってはみたけれど、一緒に見て欲しい弟はもうこの世にはいない。
その魂さえも傍には居ないのだという大伯皇女の孤独感が非常によく表現されている一首ですね。


馬酔木(あしび)は現在の馬酔木(あせび)のこと。
葉や茎に毒があり、馬が誤って食べると中毒を起こして酔ったようになることからこの名がつけられたそうです。



三重県名張市夏見の、夏見廃寺跡にあるこの歌の歌碑。



原文と現代語訳の歌碑が二つよりそって立っています。
まるで大津皇子と大伯皇女の姿のようですね。



夏見廃寺跡。
夏見廃寺は、大伯皇女が父である天武天皇の追福を祈る為に建立した昌福寺がはじまりと伝えられています。
ただ、一説によれば昌福寺は謀反の罪で殺害された弟の大津皇子を偲ぶ小堂であったともいわれ、謀反人とされた大津皇子を表だって弔えない為に父の追福を祈る為としたのかも知れませんね。

夏見廃寺跡は国道165号線沿いの名張市役所の前、名張運動公園に隣接した場所にあります。

この後、701年に亡くなるまで大伯皇女がどのような人生を歩んだのかは現在に伝わっていません。
ただ、おそらくは罪人の姉として孤独の中で、二上山に眠る亡き弟を偲び一生を終えたのでしょう。



藤原京から見た二上山。
大伯皇女も都の遠く西の果てにある二上山を眺めて、弟を偲びながら余生を過ごしたのでしょう。


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万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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