万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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巨勢山(こせやま)のつらつら椿つらつらに見つつ思(しの)はな巨勢の春野を

巻一(五十四)
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巨勢山のつらつら椿を、その名のようにつらつら見ては賛美したいものだなあ。巨勢の春の野を。
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この歌は坂門人足(さかとのひとたり)の作で、大宝元年(701年)の秋、持統天皇が文武天皇とともに紀伊国の「紀の牟婁(むろ)の湯」(白浜温泉)に行幸したとき、同行した坂門人足が詠んだ歌です。
一見、単純に秋に訪れた巨勢山で、春に咲く椿を見てみたいものだと言っているようにも取れますが、この歌も土地誉めの要素が強く巨勢山を賛美することで土地の精霊の加護を受けて旅路の無事を祈る歌なのでしょう。

その証拠に、巻一の(五十六)にはこの歌の元となったといわれている「河の辺(へ)のつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢の春野は」という歌が収録されています。
この手の土地誉めの歌はお呪いの呪文のようなもので、伝承となってさまざまな人が詠み替え詠いついで来たようですね。

また、この歌の特色のひとつとして、歌の「調べ(リズム)」の滑らかさは特筆すべきものがあるように思います。
「巨勢山の…巨勢の春野を」、「つらつら椿つらつらに」など繰り返しの技法を使うことで、歌を口ずさんだ時に非常に心地よくすらすらと暗じられるようになっています。
人々に詠み継がれ歴史のなかに残る名歌には、このような「調べ(リズム)」感のよいものが多いものです。


近鉄吉野口駅のそばにある阿吽寺境内に、この歌の歌碑があります。



奈良県御所市大字古瀬にある巨勢寺跡
近鉄吉野線とJR和歌山線の線路に挟まれた非常に狭い土地の中(近鉄吉野口駅から北に少し行った場所)にあります。



巨勢寺跡解説。



敷地内にはたくさんの椿が植えられています。



巨勢寺跡の塔の心礎。
かつて建っていた塔の心柱の礎石です。



こちらは巨勢寺跡から国道を少し南に下った場所(巨勢寺跡と吉野口駅の中間ぐらいの場所)にある巨勢山口神社
巨勢山とはこの神社のある山のことか?



つらつら椿。
見つつ思はな巨勢の春野を…


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万葉集巻一の他の歌はこちらから。
万葉集巻一


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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