万葉集入門
現存する日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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夢(いめ)の裏(うら)に作れる歌一首
新墾田(あらきだ)に鹿猪田(ししだ)の稲を倉に挙蔵(あ)げてあなひねひねしわが恋ふらくは
右の一首は、忌部首黒麿(いむべのおびとくろまろ)の、夢の裏(うら)にこの恋の歌を作りて友に贈り、覚(おどろ)きて誦習(うた)はしむるに前(さき)の如し。
左注訳
右の一首は、忌部首黒麿が夢の中でこの恋歌を作って友に贈たが、目が覚めてから友人に聞いてみると夢の歌の通りであった。
巻十六(三八四八)
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新しく開いた、鹿や猪の荒らす田の稲を刈り取って高床の倉に収めて、その米のようにああ干乾びてしまった私の恋は
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この歌は、題詞に「夢の裏に作れる歌一首」とあるように、夢の中で詠まれた一首です。
作者は忌部首黒麿(いむべのおびとくろまろ)で、左注によると黒麿が夢の中でこの歌を作って友人に贈ったのだそうです。
そして、目が覚めてからその友人に確認すると、夢の中の歌の通りだったと云います。
歌の内容は、「新しく開いた、鹿や猪の荒らす田の稲を刈り取って高床の倉に収めて、その米のようにああ干乾びてしまった私の恋は」と、倉の中に収めて仕舞ってある米のように自身の恋も干乾びて古くなってしまったとの意味ですね。
「倉に挙蔵(あ)げて」とは、この時代の倉が高床であった為の表現。
「夢(いめ)の裏(うら)」とは、夢の中であると同時に、夢占いの意味もあるのでしょう。
恋から遠ざかっていた友人は、黒麿の夢占いに言い当てられて、ますます落ち込んだかも知れませんね。
奈良県広陵町の竹取公園にある高床式倉庫(復元)。
これは古墳時代の高床式倉庫を復元したものですが、飛鳥時代や奈良時代に入ってもまだこのような形の倉庫は使われていたのでしょう。
忌部首黒麿たちの時代の形はもう少し立派だったかも知れませんが…
高床式倉庫(高床倉庫)の鼠返し。
柱を登って鼠が倉庫に入れないように、このような鼠返しの板が取りつけられています。
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万葉集巻十六
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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