万葉集入門  ()
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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何処(いづく)にか船泊(ふなは)てすらむ安礼(あれ)の崎漕(こ)ぎ廻(た)み行きし棚無(たなな)し小舟(をぶね)

右の一首は高市連黒人(たけちのむらじくろひと)

巻一(五八)
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いまごろは何処に船を泊めているだろう、安礼の崎をめぐって行ったあの棚無し小舟は…
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この歌は高市連黒人(たけちのむらじくろひと)が旅先で詠んだ一首。
「安礼の崎」は愛知県あたりの地名だという説がありますが、はっきりとしたことは分かっていません。
「棚無し小舟」は側面に棚の無い舟のことで、つまり小さな舟の意味です。
そんな「安礼の崎をめぐって行った小舟はいまごろ何処に舟を泊めているだろうか…」と、夜のしじまの中で昼間見た舟に意識を集中して思いめぐらせているわけですね。

ただ、これも単純に昼間見た小舟を回想して思いを巡らせているというだけではなく、昼時に見た輝いた海をゆく小舟に意識を集中することで悪しき精霊たちが活動し出す夜の時間の心の動揺を必死に鎮めようとした鎮魂の歌であるように思えます。
この時代の人々は旅先の道々にその土地に居ついた神々や精霊がいると信じて、そこを通る時には幣をささげたり土地讃めの歌を詠んで旅の無事を祈りました。
そして逢魔ヶ時(夕方)から夜は神々や精霊、悪しき魔物がもっとも活動を活発にする時間と信じて畏れ、家に残してきた妻を一心に思う歌などを詠んでその心の動揺や拡散を鎮めるたのです。

高市連黒人のこの歌もそれと同じように、昼間の波輝く安礼の崎をめぐって行った小舟という輝く存在に心を集中することで、その夜の闇の中に拡散しそうになる心を鎮めようとしたわけですね。


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万葉集巻一の他の歌はこちらから。
万葉集巻一


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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