万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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夕さらば潮(しほ)満ち来(き)なむ住吉(すみのえ)の浅鹿(あさか)の浦に玉藻刈(か)りてな
巻二(一二一)
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夕暮れになれば潮が満ちてくるだろう。その前に住吉の浅鹿の浦の玉藻を刈りたいなあ。玉藻のような君を…
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この歌も巻二(一一九)の歌などと同じく、弓削皇子(ゆげのみこ)が紀皇女(きのひめみこ)を思って詠んだ四首の歌のうちの一首。
「住吉(すみのえ)の浅鹿の浦」は現在の大阪府住吉区浅香町から大阪府堺市浅香山町あたりの海岸。
そんな「浅鹿の浦の玉藻のような君を潮が満ちてくる前に刈り取りたい」と、紀皇女を玉藻に譬えて詠っているわけですね。
「刈る」は「千切る」で「契る」の意味でしょう。
現在よりも平均寿命が短く医療も発達していなかった万葉の時代には、人はいつ死んでもおかしくないという切迫感が常にあったのかも知れませんね。
潮が満ちて来る前に愛しい紀皇女契りを結びたいとの弓削皇子のこの切なる想いは、はたして叶ったのでしょうか。
それらを伝える資料は現在にはなにも伝わっていませんが、この歌もまた夭折してこの世を去ることになる皇子自身の未来を暗示しているかのようでわれわれの心に迫ってくるものを感じさせてくれます。
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万葉集巻二
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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