万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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反歌二首

石見(いはみ)のや高角山(たかつのやま)の木(こ)の際(ま)よりわが振る袖(そで)を妹(いも)見つらむか

巻二(一三二)
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石見の高角山の木々のあたりから私が振っている袖を妻は見ているだろうか
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この歌は巻二(一三一)の長歌につけられた二首の反歌のうちのひとつで、柿本人麿(かきのもとのひとまろ)が赴任先の石見の国(現在の島根県の西半分)から大和へ戻る際に石見の現地妻を思って詠んだ一首。
巻二の相聞の部類に集録されていますが、この歌も長歌と同じで恋歌であると同時に旅路での心の不安を妻に意識を集中することで鎮めようとした旅の鎮魂歌としての性質も持っているように感じます。

「袖を振る」というのは単純に手を振っているわけではなく、愛しい人の魂をこっちにおいでと呼び寄せる呪術的な儀式のひとつです。
この場合は、石見の里に残してきた妻の心を自分のほうに呼び寄せているわけですね。
そして「この石見の高角山の木々のあたりから私が振っている袖を妻は見ているだろうか」と詠っているのは、もちろん妻からは目で見えるはずがないことは分かっているわけで、「袖振り」の効力で心で感知してくれているだろうかとの意味となっています。

まあ、そんな当時の風習などは知らなくとも、愛しい妻を思ってその妻のいる家の方角に心を引かれる気持ちは現代人にも充分に共感できる思いですよね。


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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