万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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磐代(いはしろ)の野中(のなか)に立てる結び松情(こころ)も解けず古(いにしへ)思ほゆ
いまだ詳(つばひ)らかならず
巻二(一四四)
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磐代の野の中に立つ結び松の結ばれた枝のように、僕の心の悲しみも解けずにいにしえのことが思い出されるよ。
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この歌も持統天皇の紀伊行幸(持統四年のことか)に従駕したときに、長忌寸意吉麿(ながのいみきおきまろ)が磐代の結び松を見て詠んだとされる二首のうちの一首。
ただ、後の注釈に「いまだ詳(つばひ)らかならず」とあることから、実際に作者が長忌寸意吉麿であるかどうかははっきりとしていないようです。
まあ、この歌も有間皇子の無念の魂を慰める鎮魂歌であって後の世の文学作品とは違いますので、実際の作者が誰であるかはそうこだわる必要もない気がしますが…
「磐代の野の中に立つ結び松の結ばれた枝のように、僕の心の悲しみも解けずにいにしえのことが思い出されるよ」と、長忌寸意吉麿が自分にとっては三十年以上も前の有間皇子事件にここまで悲しみを感じるのは少し理解しがたいかも知れませんが、万葉の時代の人々は現代人よりもはるかに感受性豊かに目の前の霊や魂の存在を信じていたので有間皇子の無念もまさに目の前にその魂が存在していると感じていたのです。
こういう言い方をすると身も蓋もありませんが、このような怨念の魂の漂う土地を通過するときはその魂を慰めて通らなければ自身も呪われて不幸が起こってしまうとも感じていたようですね。
そんな有間皇子への鎮魂の挽歌から、この時代の人々がいかに霊の存在を信じその怨念がもたらす呪いの恐ろしさを感じていたのかがみなさんにも理解していただけるのではないでしょうか。
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万葉集巻二
万葉集書籍紹介(参考書籍)
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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