万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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十市皇女(とをいちのひめみこ)の薨(かむあが)りましし時に、高市皇子(たけちのみこのみこと)の作りませる御歌三首

三諸(みもろ)の神の神杉夢(かむすぎいめ)のみに見えつつ共に寝(い)ねぬ夜(よ)ぞ多き

巻二(一五六)
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三輪山の神の神杉のような愛しい皇女よ。夢にのみ見て共に寝ることのできない夜の長かったことだ。
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この歌は十市皇女(とをいちのひめみこ)が亡くなったときに高市皇子(たけちのみこのみこと)が詠んだ三首の挽歌のうちのひとつ。
(この歌以降、天武天皇の時代の挽歌がしばらく続きます。)

十市皇女は天武天皇と額田王の皇女で、天武天皇の兄である天智天皇の皇子の大友皇子の正妃として葛野王(後の橘諸兄)を産みました。
実の父である天武天皇が、夫の大友皇子の近江朝廷と戦い滅ぼす「壬申の乱」という悲劇的な出来事があった後、十市皇女は天武天皇の庇護の下で暮らしていたようです。
ただ、天武天皇の皇女とはいえ、敵方の大友皇子の正妃でもあったという立場は、やはり複雑で肩身の狭いものであったことが想像できますね。
この皇女の死因については突然に病発して亡くなったことから自殺や暗殺説なども噂されていますが、たしかなことは分からないようです。

この歌はそんな十市皇女の死に際して高市皇子が贈った恋歌とも取れる挽歌ですが、このことから二人が恋仲にあったとも伝えられています。
十市皇女、高市皇子ともに天武天皇の皇子ですが、この時代は母親の違う兄弟の恋愛は普通のこととされていました。

「夢にのみ見て共に寝ることのできない夜の長かったことだ。」とはどことなく片思いのような内容でもありますが、あるいは共に愛し合いながらもかつての敵方の正妃だった十市皇女との恋愛は周りの反対もあって叶わないものであったのかも知れませんね。


奈良県桜井市にある大神神社(おおみわじんじゃ)拝殿。
本殿を持たず三輪山自体をご神体に祭る神社で、日本最古の神社のひとつと言われています。



大神神社境内にある巳の神杉。
白い蛇の神「大物主大神(おおものぬしのおおかみ)」が棲んでいるといわれる神杉です。


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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