万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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一書に曰はく、天皇崩(すめらみことかむあが)りましし時の太上天皇(おほきすめらみこと)の御歌(おほみうた)二首

燃(も)ゆる火も取りて裹(つつ)みて袋には入(い)ると言はずや面(おも)知るを雲

巻二(一六〇)
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燃える火も取って包んで袋に入れるというではないですか。お顔をよく知るというのに。雲よ。
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この歌も天武天皇の崩御された時に沙羅羅大后(後の持統天皇)が詠まれた挽歌であると一書に伝わっている二首のうちのひとつです。
詞書の「太上天皇」も沙羅羅大后のこと。

この歌は、次に紹介する巻二(一六一)の歌と共に非常に難解な歌で、とくに結句は訓読みすらはっきりとは定まっていないようです。
「燃ゆる火」というのは火の玉のような意味で、亡くなった天武天皇の魂のことでしょうか。
そんな火の玉をも袋に入れるように取って包み込む力が雲にはあるとの伝承がこの時代には存在していたのかも知れませんね。

そう解釈すると、「お顔をよく知る天皇の魂を、雲よ、どうか包み込んでどこにもいかないように留め置いてほしい」との願いがこもった沙羅羅大后のなんとも切ない思いが伝わってくる一首といえるのではないでしょうか。


天武・持統天皇陵。


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万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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