万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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天皇の崩りましし後八年の九月九日、奉為(おほんため)の御斎会(ごさいゑ)の夜に夢(いめ)のうちに習(なら)ひ給へる御歌一首 古歌集の中に出づ

明日香(あすか)の 清御原(きよみはら)の宮に 天(あめ)の下 知らしめしし やすみしし わご大君 高照らす 日の御子(みこ) いかさまに 思ほしめせか 神風(かむかぜ)の 伊勢の国は 沖つ藻も 靡(なび)ける波に 潮気(しほけ)のみ 香(かを)れる国に 味(うま)ごり あやにともしき 高照らす 日の皇子(みこ)

巻二(一六二)
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明日香の浄御原の宮に、天下をお治めになられたわが大君、天高き日の御子よ。いかなるお心ゆえか神風の吹く伊勢の国は海の底の藻も靡く波に、潮気だけが香れる国に…(おいでになってしまわれた)、織り目も美しい綾のように、あやに慕わしい天高き日の御子よ。
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この歌は天武天皇の崩御された後の持統七年、九月九日に行われた御斎会(ごさいゑ)の夜に天武天皇の霊と夢で逢った持統天皇(沙羅羅大后)が詠まれた一首。
実際には持統天皇の代わりに夢の中で霊と対話する占い師が存在してその者が詠んだ歌と思われますが、形式上、持統天皇の作となっています。

内容としては明日香の浄御原で即位して天下をお治めになった天皇…と天武天皇を讃え、その天武天皇の魂が伊勢の国に行ってしまわれたと、天皇の亡くなられたことを哀しんでいます。
歌の中では「香れる国に」のあとに、天皇が「おいでになってしまわれた」と続く部分が省略されているわけですね。
そして「あやに(不思議なほどに)慕わしい天高き日の御子よ」と、天武天皇への愛情の深さを詠って天武天皇の魂を慰めている訳です。

一応、代作でありますが、この時代の歌はあくまで言霊としての呪術的意味合いのあるなものなので誰の作であるかはあまり問題ではなく、実際に口に唱えて霊に詠い掛けることが出来ればそれでよかったわけですね。
持統天皇(沙羅羅大后)もきっと、この歌を何度も何度も口ずさんで、遠き伊勢の国にいる天武天皇の魂にその慕わしい思いを語り掛けたことでしょう。


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万葉集巻二


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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