万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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柿本朝臣人麿の石見(いはみの)国に在りて臨死(みまか)らむとせし時に、自(みづか)ら傷(いた)みて作れる歌一首

鴨山(かもやま)の岩根(いはね)し枕(ま)けるわれをかも知らにと妹(いも)が待ちつつある

巻二(二二三)
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鴨山の岩を枕として死のうとしている私を何も知らずに妻は待ち続けているのだろう。
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この歌は柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が石見国(現在の島根県の西半分)で亡くなる直前に詠んだとされる一首。
人麿物語の伝承歌で、実際に人麿が詠んだものであるのかどうかはちょっと疑わしいようですが、柿本人麿の最後を伝える貴重な資料にもなっている歌です。

この「妹(妻)」についてはおそらく石見国に居る依羅娘子(よさみのをとめ)のことでしょうか。
「鴨山」は神山で所在は不明ですが、各地にあった神の住む神聖な場所としての「神なび」のひとつと思われます。
そんな「鴨山で今まさに自分が臨終の時を迎えようとしていることも知らずに、妻は私の帰りを待ち続けているのだろうなあ」との、家に残してきた妻のことを推量してのなんとも切ない一首ですよね。

人麿の死についてはじつは実際に石見国に赴いたのかどうかも怪しく、また刑死説などもあるようではっきりとしたことは何ひとつ分かっていないのですが、このような歌が残っている以上やはりそこには何らかの真実があるような気が僕にはします。


奈良県天理市櫟本の柿本寺跡にある、人麿の遺骨を葬ったとされる歌塚。
(場所は式内和爾下神社のすぐ隣)
人麿が石見国で亡くなったのが事実とするなら、その遺骨の一部を持ち帰ってここに葬ったということでしょうか。
人麿の墓については、おなじく奈良県新庄町の人麻呂神社にもその伝承があり、あるいは人麿に関係した各地に分骨されたのかも知れませんね。



柿本寺跡(歌塚)解説。



歌塚の横には立派な人麿の象も立っています。


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万葉集巻二の他の歌はこちらから。
万葉集巻二


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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