万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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鴨君足人(かものきみのたりひと)の香具山(かぐやま)の歌一首并せて短歌

天降(あも)りつく 天(あま)の香具(かぐ)山 霞(かすみ)立つ 春に至(いた)れば 松風に 池波立ちて 桜花(さくらばな) 木(こ)の晩茂(くれしげ)に 奥辺(おきへ)には 鴨妻呼(かもつまよ)ばひ 辺(へ)つ方に あぢむら騒(さわ)き 百磯城(ももしき)の 大宮人(おほみやびと)の 退(まか)り出(で)て 遊ぶ船には 梶棹(かぢさを)も 無くて不楽(さぶ)しも 漕(こ)ぐ人無しに

巻三(二五七)
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天から降りてきたという天の香具山に霞立つ春になれば、松風に池は波立ち、桜の花は木の下も暗くなるほど繁り、沖の方では鴨が妻を呼んで鳴き、岸の方では味鴨が鳴き、壮麗な大宮人が退出して遊ぶはずの船には、梶も棹もなく、漕ぐ人も無しに寂しいことです。
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この歌は鴨君足人(かものきみのたりひと)が香具山を詠んだ一首。
鴨君足人についてははっきりしたことは分かりませんが、藤原宮大極殿の地を鴨公というそうなので、そこに居住した祭祀の氏族かと思われます。

歌の内容としては前半部分で天の香具山に桜は木の下が暗くなるほど満開に咲き、埴安の池には鴨が妻を呼び鳴いているなど、その美しさが讃えられています。
しかし、後半部分を読むとそこには宮殿から退出して池に遊ぶはずの大宮人の姿はなく、船には梶も棹も無しに荒れていることだと、その荒廃ぶりを悲しんでいます。
このことから、この歌が詠まれたのはおそらくは都が奈良に遷ってからのもので、祭祀の氏族である鴨君足人が荒んでしまった藤原京の土地の神を憐れみ慰めた鎮魂歌なのでしょう。


藤原京大極殿跡。
藤原宮大極殿の地を鴨公というそうなので、鴨君足人はそこに居住した祭祀の氏族かと思われます。
この時代の人々は、土地の繁栄はその土地の神の力によるものと信じ、土地が衰退してしまうのは神の力が弱まってしまったためだと考えていたようです。
そして荒れてしまった土地を訪れたものは歌を詠んでその土地の神を慰めたりもしました。


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万葉集巻三


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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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