万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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阿部女郎(あべのいらつめ)の屋部坂(やべさか)の歌一首

人見ずはわが袖もちて隠(かく)さむを燃えつつかあらむ着せずて来(き)にけり

巻三(二六九)
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人目をはばかって袖で隠さなかったためにあなたの心は今も燃え続けているでしょうか。袖で隠さずに来てしまったなあ。
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この歌は阿部女郎(あべのいらつめ)の詠んだ一首。
袖で隠すとは、衣を貸すことで恋人同士の習慣だったようです。
屋部坂(やべさか)は奈良県磯城郡田原本の矢部など諸説あるようですが、おそらくは恋人の里の境の坂なのでしょう。
この歌はかなり難解な歌で、歌の意味についても解釈が定まっていないようですが、雑歌の中に集録されていることから単純に恋歌とは違うようですね。

「燃えつつあらむ」の「む」は推量の意味なので、自身ではなく相手のことと思われます。
とすると、袖で隠さなかったために相手の心が燃えてしまったとの後悔の念と詠めますね。
小さな火ならば袖(衣)で隠すことも出来たけれど、燃え上がった火はもう隠すことも出来ない…

おそらくは、人目をはばかって袖で隠さなかったために逆に相手が隠す必要のない恋として受け取り、余計に人目についてしまう結果になったとのそんな後悔の歌なのではないしょうか。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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