万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
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(解説:黒路よしひろ)

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高市連黒人(たけちのむらじくろひと)の羈旅(たび)の歌八首

旅にして物恋(ものこほ)しきに山下(やました)の赤(あけ)のそほ船沖(ふねおき)へ漕(こ)ぐ見ゆ

巻三(二七〇)
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旅先にあって物思いしているときに山の黄葉の色づくような赤丹の船が沖へ漕いで行くのが見えるよ。
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この歌は高市連黒人(たけちのむらじくろひと)が旅先で詠んだ八首の歌のうちの一首。
ここから黒人の歌が八首続きます。
高市黒人は柿本人麿(かきのもとのひとまろ)と同時代に人物で、人麿に比べてより静かな「調べ(リズム)」の心にしみてくるような旅の歌を多く残しています。

この歌もそんな黒人が旅先で詠んだ一首ですが、「旅先にあって物思いしているときに山の黄葉の色づくような赤丹の船が沖へ漕いで行くのが見えるよ。」と、沖へと漕いで行く船に思いを馳せた内容となっていますね。
「赤(あけ)のそほ」というのは、「赤丹(あけのそほ)」で、赤い土のこと。
つまりは赤い土を塗った船の意味です。

この時代、海は異界と繋がっているとも考えられていました。
そんな異界との境の海に漕ぎ出してゆく船に、黒人は旅先での心細い自身の姿を重ねて見たのでしょう。
旅路での動揺しそうになる心への危惧を沖へ漕いで行く船を通して詠った静かな魅力の一首ですよね。


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万葉集巻三


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万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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