万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
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(解説:黒路よしひろ)

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高市連黒人(たけちのむらじくろひと)の歌一首

住吉(すみのえ)の得名津(えなつ)に立ちて見渡せば武庫(むこ)の泊(とまり)ゆ出(い)づる船人(ふなびと)

巻三(二八三)
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住吉の得名津に立って見渡すと、いましも武庫の港から出航してゆく船人よ。
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この歌は高市連黒人(たけちのむらじくろひと)が旅先で詠んだ一首。
「得名津(えなつ)」は大阪市住吉区住之江町あたりから堺市浅香山町、遠里小野町あたり。

そんな「住吉の得名津に立って見渡すと、いましも武庫の港から出航してゆく船人よ。」と、遠く武庫の港から出航してゆく船に心を寄せて詠んだ一首となっています。
旅愁の歌人とも呼ばれる黒人ですが、とくに海を行く船には旅先の自身の孤独な身と重ねて感じ入るものがあったようですね。
この歌でも、異界との境(当時、海は異界と繋がっているとも考えられていました)である海へと出航してゆく船に、旅先での不安に消え入りそうになる自身の姿を重ねて見ていたのではないでしょうか。


住吉区にお住まいの方から得名津のあった榎津寺の跡地が遠里小野町にあるとの情報提供をいただき、取材に行ってきました。
その方のお話では、 遠里小野町にある大阪府の供給公社の建て替え工事中に榎津寺の遺跡が発掘されたのだそうです。
上の写真は、大阪府の供給公社、OPH杉本町へ入っていく通路(少しわかりにくい場所にありますが、JR杉本町駅から歩いて十分ほどの場所です)。



一枚目の写真のOPH杉本町へと入ってゆく通路の入口付近に、榎津寺跡の解説プレートがありました。



飛鳥時代後半から平安時代中ごろに、この地に「榎津寺(えなつでら)」あるいは「朴津寺(えなつでら)」と記される大寺院が存在したとのこと。



供給公社の建て替え時に、大量の古代瓦が出土したそうです。



大阪府の供給公社、OPH杉本町。
このOPH杉本町の建て替え工事の掘削で、榎津寺の遺跡が出土したのだそうです。



OPH杉本町の裏側に回ると大和川が流れており、その向こうに兵庫県の六甲山が見えています。



OPH杉本町のあたりから兵庫方面(武庫)を眺めた写真。
住吉津がメインの船着き場としたら江名津は第二の船着き場だったとのこと。
見晴らしの良いこの地は防人を置いた警備の山でもあったのだそうです。



拡大写真。
奥に見えるのが兵庫県の六甲山(武庫の地)。
現在では手前に建物が立って大阪湾の海は見えませんが、万葉の時代には大和川も現在のように整備されておらず、海ももっと近くまで来ていたのでしょう。

また、得名津の地あたりは標高12メートルの場所にあるそうで、高市黒人は榎津寺の楼閣から武庫の港を眺めたようなので、この写真よりももっと見晴らしがよかったかと思います。

実際にこの地に立って黒人のこの得名津の歌を口ずさむと、遠き万葉の時代の武庫の港を行き交う船人たちの姿が蘇ってきます。


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