万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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志賀(しが)に幸(いでま)しし時に石上卿(いそのかみのまへつきみ)の作れる歌一首 名闕(か)けたり
ここにして家(いへ)やも何処白雲(いづちしらくも)のたなびく山を越えて来(き)にけり
巻三(二八七)
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ここにあって家はどちらの方角にあるのだろうか。それさえもわからないほどに白雲のかかる山を越えて来たのだなあ。
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この歌は天皇の志賀(しが)行幸に従駕した石上卿(いそのかみのまへつきみ)が詠んだ一首。
石上卿については題詞に「名闕(欠)けたり」とあるように、誰のことなのかはっきりしませんが、あるいは石川麿のことでしょうか。
そんな石川卿が旅先で詠んだ一首ですが、「ここにあって家はどちらの方角にあるのだろうか。それさえもわからないほどに白雲のかかる山を越えて来たのだなあ。」と、家のある大和の方角もわからないほどの遠くへやって来た不安な気持ちを詠っています。
「家」とはこの場合は家で待つ妻を念頭に置いての言葉なわけですね。
つまりはこの歌も単純な旅情の歌ではなく、旅路に動揺する自身の心を家に残してきた妻を思うことで鎮めようとした旅の鎮魂歌だったのでしょう。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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