万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


弁其(べんき)の歌一首

亦打山夕(まつちやまゆふ)越え行きて廬前(いほさき)の角太河原(すみたかはら)に独(ひと)りかも宿(ね)む

巻三(二九八)
-----------------------------------------------
真土山を夕方に越えて行き廬前の隅田の河原に妻もなく独り寝ることだなあ。
-----------------------------------------------

この歌は弁其(べんき)が真土山を越えたときに詠んだ一首。
「亦打山(まつちやま)」は、真土山(まつちやま)で、和歌山県橋本市真土の県境一帯にある山のこと。
おそらくは天皇の紀伊行幸に従駕したときの歌ではないかと思われます。

「弁其」は春日老(かすがのおゆ)の僧侶としての名で、大宝元年三月に還俗して春日老に戻ったようです。
そんな弁其が詠んだ一首ですが、「真土山を夕方に越えて行き廬前の隅田の河原に妻もなく独り寝ることだなあ。」と、旅先で妻の居ない独り寝の不安を詠った一首ですね。
これもいわゆる旅の鎮魂歌で、旅先での不安に動揺する心を家に残してきた妻を思うことで鎮めようとした歌なのでしょう。

この時代、旅先の道々には人に害をなす魔物などが居ついていて、夜はそれらの魔物が最も活発に活動する時間帯だと考えられていました。
それゆえに旅先での粗末な仮の宿で一晩を過ごす旅人たちはは、この弁其のように家に残してきた妻を思う歌を詠むことで不安な心を鎮め、魔物に心を取り込まれてしまわないように祈ったのです。


和歌山県橋本市隅田町の隅田駅前にあるこの歌の歌碑。



和歌山県橋本市真土にある亦土山の石標。
真土山はこのあたり一帯の山のこと。


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻三の他の歌はこちらから。
万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2015 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販