万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


柿本朝臣人麿の筑紫国(つくしのくに)に下りし時に、海路(うなぢ)にして作れる歌二首

名(な)くはしき稲見(いなみ)の海の沖つ波千重(ちへ)に隠(かく)れぬ大和島根(やまとしまね)は

巻三(三〇三)
-----------------------------------------------
名も美しい稲見の海の波の千重に立つ向うに隠れてしまったよ。大和の島影は。
-----------------------------------------------

この歌は柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)が筑紫の国に下向するときに詠んだ二首の歌のうちのひとつ。
ただ、これらの歌は丹比笠麿(たぢひのかさまろ)の歌と混同されている可能性があり、実際に柿本人麿が筑紫に下向したかどうかははっきりとしないようです。
まあ、一応、ここでは題詞通りに人麿の歌と解釈して紹介しておきますね。

「稲見(いなみ)の海」は播磨灘のこと。
「大和島根(やまとしまね)」は生駒や葛城などの大和の山並み。

そんな筑紫に向けて稲見の海を船で行く人麿が「名も美しい稲見の海の波の千重に立つ向うに隠れてしまったよ。大和の島影は。」と、遠くに見えなくなってしまった故郷の大和盆地の山々を名残惜しんで詠んだ一首となっています。
上の句で「名も美しい稲見の海」と稲見を讃えていますが、下の句で大和の山々が見えなくなったと別れを惜しんでいるのもまた大和の山々への賛美なわけですね。

新たに訪れた土地を褒めたたえると同時に、今まで見守ってくれた故郷の土地の神々との別れを惜しむ心情がよく表れている一首のように思います。


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻三の他の歌はこちらから。
万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2015 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販