万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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※1作村主益人(くらつくりのすぐりますひと)の豊前国(とよのみちのくちのくに)より京(みやこ)に上(のぼ)りし時に作れる歌一首

梓弓(あづさゆみ)引き豊国(とよくに)の鏡山(かがみやま)見ず久(ひさ)ならば恋(こほ)しけむかも

※1:「鞍」は原文では「木」偏+「安」

巻三(三一一)
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梓の弓を引き響(とよ)もす豊国の鏡山を、見ることなく久しく過ごしたならばどんなに恋しく思うことだろう。
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この歌は作村主益人(くらつくりのすぐりますひと)が豊前国(とよのみちのくちのくに)から奈良の京に上(のぼ)りし時に詠んだ一首。
「鞍作村主益人」については詳しいことはわかっていませんが、かつての飛鳥時代の渡来系仏師として有名な「鞍作止利(くらつくりのとり)」と同じ一族の人物かと思われます。
「村主(すぐり)」は渡来人への贈姓。
「豊前国(とよのみちのくちのくに)」は現在の福岡県東部と大分県北西部の地。

この歌はそんな鞍作益人が豊前国から奈良の京に上がってくるときに詠んだ一首ですが、「梓の弓を引き響(とよ)もす豊国の鏡山を、見ることなく久しく過ごしたならばどんなに恋しく思うことだろう。」と、豊国の鏡山との別れを惜しんだ歌となっています。

この時代、慣れ親しんだ土地から旅立って行く者はこのような旅立ちの儀礼歌を詠んでからその地を後にしました。
いわゆる土地の神へ奉げた別れの歌といったところでしょうか。
同時に、いままで豊国で無事に過ごせたことへの感謝の言霊の歌でもあったのでしょうね。


飛鳥時代の渡来系の仏師として有名な「鞍作止利(くらつくりのとり)」作の飛鳥大仏(飛鳥寺蔵)。
この歌の作者の鞍作益人は奈良時代の人物ですが、鞍作止利と同じ一族の人物かと思われます。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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