万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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浅茅原(あさぢはら)つばらつばらにも思(も)へば故(ふ)りにし郷(さと)し思ほゆるかも

巻三(三三三)
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浅いチガヤの原のチガヤのように、つばらつばら(つくづく)と物思いにふければ明日香の故郷が思い出されることだなあ。
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この歌も大宰府にて大伴旅人(おほとものたびと)が詠んだ五首の歌のうちの一首。
これまでの歌と同じく、この歌も小野老(をののおゆ)の帰還を祝う宴の席でのものでしょう。

「茅」は植物のチガヤ。
その「チガヤ」の音の響きからよく似た「つばらつばら」を引き出して後に続けています。
「つばらつばら」は「つくづく」の意味。
そんな「浅い茅原のチガヤの名の響のきのようにつくづくと物思いにふけっていると、懐かしい明日香のことが思い出されるなあ」との、この歌もしみじみとした望郷歌ですよね。
「故りにし郷」についてはどこかははっきりと詠われていませんが、次の巻三(三三四)の歌で香具山を故りにし里の山として懐かしんで詠っているので、この歌の「故りにし郷」も藤原京か明日香あたりのことと思われます。

大伴旅人が生まれたのは665年のことで、天智天皇によって宮が飛鳥から近江に移される前年のことでした。
その後、天武天皇の壬申の乱によって再び飛鳥宮に戻ってからは明日香や藤原京で過ごした時間も長く、平城京と同じく明日香周辺の地も旅人にとっては懐かしい故郷だったのでしょう。
(旅人が幼少期に近江にいたかどうかははっきりしていませんが…)

おそらくはもう二度と藤原京や明日香の地にも立つことはないだろうと思うと、その望郷の念はさらに増したことだろうと想像出来ます。


明日香の里からみた甘樫丘周辺の風景。


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万葉集巻三の他の歌はこちらから。
万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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