万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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わすれ草(くさ)わが紐(ひも)に付く香具(かぐ)山の故(ふ)りにし里(さと)を忘れむがため

巻三(三三四)
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わすれ草を私は紐に付けているよ。香具山の見える懐かしい故郷を忘れるために…
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この歌も大伴旅人(おほとものたびと)が大宰府にて詠んだ五首の歌のうちの一首で、これまでの歌と同じく小野老(をののおゆ)の帰還を祝う宴の席でのものでしょう。
「わすれ草」は「萱草(かんぞう)」のことで、人の憂いを忘れさせてくれるといわれる草。
そんな「わすれ草を紐につけていなければ、香具山の見える懐かしい故郷のことが思い出されて悲しくて仕方がない」との、この歌もなんとも悲しさの漂う望郷歌ですよね。

この時期、大伴旅人は六十代でしたが、この時代の六十代はもういつ死んでもおかしくない老年でした(実際、旅人は都に戻った翌年に六十六歳でこの世を去ります)。
そんな人生の最期が近づいている年代で大宰府に派遣され、京では対立的な立場であった新興貴族の藤原家が政を牛耳っている境遇は、旅人にとってはすべてわすれ草の力を借りて忘れてしまいたい出来事だったのかも知れませんね。


奈良県橿原市の本薬師寺跡の前にこの歌の歌碑があります。



歌碑の解説。



史跡元薬師寺跡



天の香具山。



ヤブカンゾウ。
忘れ草はヤブカンゾウやノカンゾウなどの夏に咲く萱草(かんぞう)類のこと。
ヤブカンゾウは花が八重に咲きます。



こちらは一重のノカンゾウ。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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