万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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わが行きは久(ひさ)にはあらじ夢(ゆめ)のわだ瀬(せ)にはならずて淵(ふち)にあらぬかも
巻三(三三五)
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私が大宰府にいる期間は長くはないだろう。吉野の夢のわだも瀬にはならずに淵のままであってほしい。
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この歌も大伴旅人(おほとものたびと)が大宰府にて詠んだ五首の歌のうちの一首。
これまでの歌と同じく小野老(をののおゆ)の帰還を祝う宴の席でのものでしょう。
「夢のわだ」は「夢の和田」で、象(さき)の小川が吉野川の本流に注ぎ込んでいる合流地点のこと。
「瀬」は川などの浅くて渡れる浅瀬。
「淵」は深い場所のことです。
つまりは「自分が大宰府から帰ってくるまで、吉野の夢のわだは浅瀬になどならずに深いままであってほしい」との願いの一首な訳ですね。
「私が大宰府にいる期間は長くはないだろう」とはこれまでの歌に比べて急に前向きな内容ですが、これもどちらかといえば実際にそんな見通しがあるというよりはそう願いたいとの思いを歌に込めたのでしょう。
実際に、旅人が大宰府にいた期間は思いのほか長くはなく、また夢のわだも瀬になることはなく深い淵のままで千数百年経った現在に至っているのでした。
吉野の宮滝にある象の小川が吉野川に合流する「夢のわだ」(写真左の川の白く見える部分です)。
真上から見た「夢のわだ」(写真上側が吉野川で写真下側の象の小川から流れが合流しています)。
現在では舗装された道路の下を水が流れて吉野川に流れ込んでいますが、「夢のわだ」自体は旅人の時代から千年以上たった今も淵のまま存在しています。
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万葉集巻三
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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