万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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安倍広庭卿(あべのひろにはのまへつきみ)の歌一首
雨降らずとの曇(ぐも)る夜の濡(ぬ)れひづと恋ひつつをりき君待ちがてり
巻三(三七〇)
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雨を含み曇っている夜のように袖を湿らせて恋い慕っています。あなたを待ちながら…
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この歌は安倍広庭卿(あべのひろにはのまへつきみ)の詠んだ恋歌。
「雨を含み曇っている夜のように袖を湿らせて恋い慕っています。あなたを待ちながら…」と、袖を涙で濡らし恋人の来るのを待っている様子が詠われています。
ただ、この歌は実際の恋歌を詠んだものではなく、どうやら男性である安倍広庭が女性の立場に立って詠んだ戯れの恋歌のようですね。
万葉集の時代、歌の中で「君」と使うのは普通は女性が男性を呼ぶ場合に限られていました。
また、女性が男性のもとへ通うことは滅多にないので、その点からもこの歌が女性の立場に立って戯れに詠まれたものであることがわかるわけです。
おそらくは宴の席などで戯れて詠まれた歌なのだと思われますが、実際にその夜の空は雨が降りそうなほどに曇っていたのかも知れませんね。
そんなどことなく虚構の恋の中に現実が入り混じった魅力も感じさせてくれる一首のようにも思います。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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