万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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山部宿禰赤人の春日野(かすがの)に登(のぼ)りて作れる歌一首并て短歌
春日(はるひ)を 春日(かすが)の山の 高座(たかくら)の 三笠(みかさ)の山に 朝さらず 雲ゐたなびき 容鳥(かほとり)の 間(ま)なく数(しば)鳴く 雲居(くもゐ)なす 心いさよひ その鳥の 片恋(かたこひ)のみに 昼はも 日のことごと 夜(よる)はも 夜(よ)のことごと 立ちてゐて 思ひそわがする 逢はぬ児(こ)ゆゑに
巻三(三七二)
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春の日のかすむ春日の山の、大君の高座を覆う御笠の三笠の山に、朝は去ることなく雲がかかり、郭公(カッコウ)が絶え間なく鳴き継いでいる。その雲のように心ためらい、その鳥のように片恋に昼は一日中、夜は一晩中、立っていても座っていても物思いすることだ、逢えないあの子のために。
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この歌は山部宿禰赤人(やまべのすくねあかひと)が春日野(かすがの)に登(のぼ)って作った一首。
「春日(かすが)の山」は、奈良市の東にある今の若草山と、御蓋山とその背後にある花山の三峰の山塊のこと。
「三笠(みかさ)の山」は現在の「御蓋山(みかさやま)」。
そんな春日山を詠った長歌ですが、春日山の御蓋山にかかった雲が去らないように、山に鳴くカッコウの鳴き声の絶え間ないように、昼も夜も、立っていても座っていても、逢えない恋人のことを思って心悶える様を詠った内容となっています。
一応、「春日野(かすがの)に登(のぼ)りて作れる歌」との題詞の歌ですが、おそらくは春日の野の周辺での宴会の席で詠まれた恋を主題とした宴席歌だったのでしょうね。
都人(みやこびと)の風流も感じさせてくれる、目の前の春日山の情景を詠み込んで素敵な恋歌のように感じます。
奈良市にある春日山(左から、若草山、花山、御蓋山)。
東大寺大仏殿参道から東の眺め。
御蓋山(みかさやま)。
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万葉集巻三
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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