万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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譬喩歌(ひゆか)
紀皇女(きのひめみこ)の御歌一首
軽(かる)の池の浦※1廻(うらみ)行き廻(み)る鴨(かも)すらに玉藻(たまも)のうへに独(ひと)り宿(ね)なくに
※1:「浦」は原文では「さんずい偏」+「内」
巻三(三九〇)
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軽の池の浦を泳ぎ回る鴨ですらも玉藻の上に独りで寝ることはないだろうに…
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この歌は紀皇女(きのひめみこ)の詠んだ一首。
紀皇女は天武天皇(てんむてんわう)の皇女で、穂積皇子(ほづみのみこ)の同母妹。
「軽(かる)の池」は奈良県橿原市にある剣池(つるぎいけ)のこと。
この歌から「譬喩歌(ひゆか)」となりますが、譬喩歌は心情を物などに譬える歌で相聞歌である愛の歌を収録しています。
万葉集は、万葉集巻一が「雑歌」。
万葉集巻二が「相聞」と「挽歌」からなっていてこの二つの巻を合わせると基本の三分類が揃う構成となっていますが、万葉集巻三は、「雑歌」、「譬喩(相聞)歌」、「挽歌」で構成されていて一つの巻でこれら三分類すべてを揃える構成が採られています。
紀皇女のこの一首もそんな、「軽の池の浦を泳ぎ回る鴨ですらも玉藻の上に独りで寝ることはないだろうに…」と、軽の池を泳ぎ回る鴨に自身の恋心を譬えて詠った相聞歌ですね。
「独りで寝ることはないだろうに…」とは「それに比べて私は独りで寝るのか…」との対比なわけですが、紀皇女の言いようのない独り寝の寂しさがよく表れているように思います。
奈良県橿原市の剣池沿いにあるこの歌の歌碑。
歌碑の解説。
奈良県橿原市石川町にある剣池(つるぎいけ)。
ここが軽の池と思われます。
剣池の解説板。
(柵が邪魔で読みにくいです^^;)
剣池(石川池とも)の解説。
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万葉集巻三
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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