万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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造筑紫観世音寺別当沙弥満誓(つくしのくわんぜおんじをつくるべつたうさみのまんせい)の歌一首
鳥総立(とぶさた)て足柄(あしがら)山に船木伐(ふなきき)り樹(き)に伐(き)り行きつあたら船材(ふなき)を
巻三(三九一)
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鳥総を立てて足柄山に船材を伐りながらあの男はただの木として伐って行ってしまった。惜しいことに船材を。
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この歌は造筑紫観世音寺別当(つくしのくわんぜおんじをつくるべつたう)の沙弥満誓(さみのまんせい)の詠んだ一首。
「鳥総(とぶさた)」はきこりが木を伐ったとき、伐った梢をその切り株に立てて神を奉ったもの。
「沙弥満誓」はもとは笠朝臣麿(かさのあそみまろ)といい、元明天皇の病の平癒を願って出家しました。
その後、造筑紫観世音寺別当として筑紫に下向し、太宰師(だざいのそち)として大宰府に赴任してきた大伴旅人(おほとものたびと)たちとともに後の世に筑紫歌壇といわれる独自の作風世界を生み出しました。
この歌はそんな沙弥満誓が詠んだ一首ですが、「鳥総を立てて足柄山に船材を伐りながらあの男はただの木として伐って行ってしまった。惜しいことに船材を。」と、船材として使える大きな木をきこりが船に出来ないただの木として伐って行ってしまったことを嘆いています。
ただ、もちろんこの歌も譬喩歌なので、女性を船材に譬えた恋歌なわけですね。
つまりは、もっと良家に嫁げる女性をつまらない男が娶ってしまったとの嘆きの一首でしょうか。
まあ、そうは言っても女性の幸せなど当人にしかわからないものなのだとも思いますが、どこか沙弥満誓自身がその女性に思いを寄せていたようにも取れる詠い口が魅力的な一首ですよね。
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万葉集巻三
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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