万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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大伴宿禰駿河麿(おほとものすくねするがまろ)の梅の歌一首

梅の花咲きて散りぬと人はいへどわが標結(しめゆ)ひし枝にあらめやも

巻三(四〇〇)
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梅の花が咲いて散ったと人が言っていたけれど私が標をつけておいた枝ではないでしょうね
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この歌は大伴宿禰駿河麿(おほとものすくねするがまろ)が自身の恋を梅に譬えて詠んだ一首。
大伴駿河麿は大伴御行(おほとものみゆき)の孫(父は不明)で、大伴家持の又従兄になります。

そんな駿河麿が「梅の花が咲いて散った」と人づてに噂を聞いた訳ですが、これは女性を梅に譬えて「あの娘が結婚した」との噂を聞いたわけですね。
「私が標をつけておいた枝」ももちろん女性のことを譬えたもので、自分が結婚の約束をしていた女性をこう詠っているわけですが…
「梅の花が咲いて散ったと人が言っていたけれど私が標をつけておいた枝ではないでしょうね」とは詠ってみても、悲しいかな駿河麿がもたもたとしているうちに想い人は他人の妻となってしまったのでしょう。

そんな、愛する女性が他人のものになってしまったことを信じたくない心情と、どうしてもっと早くあの梅を手折ってしまわなかったのかとの駿河麿の後悔が感じられる一首ですよね。
いつの時代も女性は自分という花の命が短いことをよく知っていて、花の盛りが過ぎる前に手折ってくれる者を選ぶのです。
そして男もまた、いつの時代でも花の散る前に手折らなかったことを駿河麿のように後悔して嘆くものなのでしょう。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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