万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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市原王(いちはらのおほきみ)の歌一首

頂(いなだき)に蔵(きず)める玉は二つ無しかにもかくにも君がまにまに

巻三(四一二)
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頭の頂に大切に仕舞う玉は二つとてないよ。ともかくもたった一つの玉のように大切なあなたのこころのままです。
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この歌は市原王(いちはらのおほきみ)の詠んだ一首。
市原王は春日王(かすがのおほきみ)の孫で、志貴皇子(しきのみこ)のひ孫です。

そんな市原王の詠んだ一首ですが「頭の頂に大切に仕舞う玉は二つとてないよ。ともかくもたった一つの玉のように大切なあなたのこころのままです。」と、想い人のことをこの世に二つとない玉のような大切な人だと宣言し、この恋はあなたのこころのままですとの絶対的な愛情を詠っています。

「頂(いなだき)」は「髻(もとどり)」のことで、髪を頭の頂上に束ねた所。
「頭の頂に大切に仕舞う玉」とは、仏典に転輪王が大切にした明珠を髻中(びんちゅう)に仕舞っていたのを譬えたもの。

つまりは自分の大切な想い人を「髻中の明珠」に譬えたわけですが、この下の句の穏やかな作風はさすがに志貴皇子の系譜といったところですよね。
ただ、女性のことを「君」と詠っている(万葉集の時代、男が女性を君と呼ぶことはありませんでした。)ことからおそらくはこの歌は宴席などで戯れに詠まれた一首だったのではないかと思われます。
あるいは「髻中の明珠」のお題などで詠んだ題詠であったのかも知れませんね。

まあ、どちらにしても、この世に一つしかない大切な珠に想い人を譬えた素敵な恋の譬喩歌ではありますが。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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