万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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溺(おぼ)れ死(みまか)りし出雲娘子(いづものをとめ)を吉野に火葬(やきはふ)りし時に、柿本朝臣人麿の作れる歌二首

山の際(ま)ゆ出雲(いづも)の児(こ)らは霧(きり)なれや吉野の山の嶺(みね)にたなびく

巻三(四二九)
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山のあたりから立ち上る雲のような出雲の娘子は霧だからか、吉野の山の嶺にたなびいているよ。
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この歌は出雲娘子(いづものをとめ)が亡くなって吉野に葬られた時に、柿本朝臣人麿(かきのもとのあそみひとまろ)の詠んだ二首の挽歌のうちのひとつです。
出雲娘子は先の巻三(四二八)の歌の土形娘子と同じく、天皇に仕える采女でしょうか。
おそらくは出雲の出身か、あるいは出雲氏の氏女だったのでしょう。
「山の際ゆ」は、山のあたりからの意味。

そんな出雲娘子が亡くなって吉野で火葬された時に人麿が詠んだ挽歌ですが、「山のあたりから立ち上る雲のような出雲の娘子は霧だからか、吉野の山の嶺にたなびいているよ。」と、こちらも巻三(四二八)の歌の土形娘子のように山際にただよう霧に娘子の魂を感じ取った鎮魂の一首となっています。

吉野で亡くなったとありますがおそらく天皇の吉野行幸の際に同行していたのでしょう。
一説によると入水だったとも言われていますが、采女は天皇以外の男性とは恋を許されない存在でしたので、あるいは恋に悩んだ末の入水だったのかも知れません。
上の句の生前の娘子を思わせる活き活きとした表現が下の句の哀しさをよりいっそう引き立てる挽歌ですよね。

おそらくは行幸に同行していたであろう人麿もこの出雲娘子とは面識があったのでしょう。
娘子無念の思いを慰める悲しい鎮魂の一首となっています。


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万葉集巻三


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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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