万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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神亀(じんき)五年戊辰(ぼしん)。大宰師大伴卿(だざいのそちおほとものまへつきみ)の故人(なきひと)を思恋(しの)へる歌三首

愛(うつく)しき人の纏(ま)きてし敷栲(しきたへ)のわが手枕(たまくら)を纏く人のあらめや

右一首は、別(わか)れ去(い)にて数旬を経て作れる歌なり

巻三(四三八)
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愛しい人が枕にした私の手枕をもう枕にする人はいない。
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この歌は大伴旅人(おほとものたびと)が亡き妻を思って詠んだ三首の歌のうちの一首。
大伴旅人は大伴家持の父で、大宰府の長官として筑紫(現在の福岡県)に赴任してすぐに妻を亡くしました。
死因ははっきりしませんがかなり若い妻だったようなので病か何かだったのでしょうか。
左注によると旅人がこの歌を詠んだのは妻が亡くなってから数旬(「旬」は十日のこと)の後とのことです。

一説によると旅人の大宰府への派遣は新興貴族である藤原家との確執が原因の左遷とも言われており、あるいはそうでなかったとしても年老いた身(この頃、旅人は六十代半ば)での遠き地への赴任は甚だ不本意なものだったはずです。
そんな不本意な地方への赴任の直後に同行した最愛の妻を亡くした衝撃は、旅人の心を深く落ち込ませるものになったようです。

この歌でも、そんな最愛の妻を亡くした悲しみを隠すことなく素直な表現で詠って亡き妻を偲んでいますね。
大伴旅人というと武門の名門である大伴家の当主として豪快なイメージのある人物ですが、実際にはこの歌のように亡き妻への思慕に悲しみ、思い通りにならない世の中の憂さを酒で晴らそうとするような非常に人間味あふれる人物でもあったようです。


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万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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