万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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十六年甲申(かふしん)。春二月に、安積皇子(あさかのみこ)の薨(かむさ)りましし時に、内舎人(うどねり)大伴宿禰家持の作れる歌六首

懸(か)けまくも あやにかしこし 言はまくも ゆゆしきかも わご王(おほきみ) 皇子(みこ)の命(みこと) 万代(よろづよ)に 食(め)したまはまし 大日本(おほやまと) 久邇(くに)の京(みやこ)は うちなびく 春さりぬれば 山辺(やまへ)には 花咲きををり 河瀬(かはせ)には 年魚子(あゆこ)さ走り いや日異(ひけ)に 栄(さか)ゆる時に 逆言(およづれ)の 狂言(たはごと)とかも 白栲(しろたへ)に 舎人装(とねりよそ)ひて 和豆香(わづか)山 御輿(みこし)立たして ひさかたの 天知(あめし)らしぬれ こいまろび ひづち泣けども せむすべも無(な)し

巻三(四七五)
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心にかけて思うのもはばかられる、口にするのも言いようもなく恐れ多い、わが大君、皇子の命が永遠に支配するはずであった日本の久邇の京は、うちなびく春になれば山辺には花が咲きおり、川瀬には若鮎が泳ぎ、日ごとに栄えて行く時に、人を惑わす戯れ言を言うのか、白栲の喪服を舎人たちは着て、和豆香山に皇子の神輿を立てて、はるか彼方の天を皇子は御支配なさってしまわれた。舎人たちは身を横たえて転がり、衣を濡らして泣くのだが、なす術もないことよ。
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この歌は安積皇子(あさかのみこ)が亡くなられた時に大伴家持(おほとものやかもち)の詠んだ六首の挽歌のうちの一首です。
安積皇子は聖武天皇の皇子で、異母姉である阿倍内親王に次ぐ皇太子となるべきもっとも有力な皇子でしたが、天平十一年(七四四)の難波行幸従駕の途中に脚気になり恭仁京に引き返した後、亡くなりました。
一説によると藤原一族が朝廷を牛耳るために邪魔な存在であった安積皇子を、藤原仲麿が毒殺したともいいますが確たる証拠はないようです。

内舎人(うどねり)は天皇に仕える側近で二十一歳に達した優秀な者たちから選出されたようです。
ただし、大伴家持は父が従二位であったことから選考無しで内舎人に選ばれたようですが…
そんな内舎人として仕えていたことから、家持は安積皇子とも近い存在であったのでしょう。
また、藤原一族に対抗する(藤原一族の血を引かない)皇子として家持たち旧貴族は安積皇子に大きな期待を寄せていたことと思われます。

そんな安積皇子の突然の死を嘆いて大伴家持が詠んだ挽歌ですが、「わが大君、皇子の命が永遠に支配するはずであった日本の久邇の京…」とは、家持がいかにこの安積皇子に期待を寄せていたかがよくわかる言葉ですよね。
「人を惑わす戯れ言を言うのか」との言葉にも、皇子の突然の死を信じたくない気持ちがよく表れています。

「和豆香山に皇子の神輿を立てて」とあるように、安積皇子は現在の京都府相楽郡和束町にある丘の上に葬られたようですね。

そして「舎人たちは身を横たえて転がり、衣を濡らして泣くのだが、なす術もないことよ。」と、諦めの言葉で締めくくっていますが、まさに今となってはどうする術もない家持たちの虚無感が感じられる挽歌となっています。


京都府木津川市にある恭仁京跡。
安積皇子は聖武天皇の難波行幸従駕の途中に脚気になり、恭仁京に引き返した後に亡くなりました。



京都府相楽郡和束町の丘の上にある安積皇子の墓。
茶畑に囲まれた美しい墓陵です。



安積皇子の墓。


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万葉集巻三の他の歌はこちらから。
万葉集巻三


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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