万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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吹黄刀自(ふきのとじ)の歌二首

真野(まの)の浦の淀(よど)の継(つぎ)橋情(こころ)ゆも思へか妹が夢(いめ)にし見ゆる

巻四(四九〇)
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真野の浦の淀に渡した継橋のように次々と心に思うからだろうか、夢の中に妻が現れるよ。
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この歌は吹黄刀自(ふきのとじ)が詠んだ二首の恋歌のうちのひとつ。
「刀自(とじ)」は一家の主婦の意味。

一読して分かるようにこの歌は男性が妻に贈った内容になっていて次の巻四(四九一)の歌と相聞歌になっているのですが、どうもこれは二首とも吹黄刀自が男女の立場に立って虚構で詠んだ恋歌のようですね。
現代短歌では虚構の歌はめずらしくはないのですが、万葉集の時代にすでにひとりの人間が男女双方の立場に立ってこのような相聞歌を詠んでいるというのは、万葉集の歌のその多様性にあらためて驚かされます。

「真野の浦」は兵庫県の西宮市周辺でしょうか。
継橋は、板を次々と連ねた橋で、その「真野の浦の淀に渡した橋板のように次々と妻を思うからだろうか、夢の中にまで妻が現れるよ」という、なんとも妻に対する想いの深い一首ですよね。
とはいえ、最初にも書いたようにこの歌を詠んだのはじつはその妻である吹黄刀自自身なので、愛しい夫の夢に出てくるほどに夫から想われたいとの願いのこもった祈りの歌でもあるのかも…
その証拠に、この歌と対になった次の巻四(四九一)の歌では、妻である吹黄刀自自身の立場で夫への深い愛情が詠われています。


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万葉集巻四


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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