万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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田部忌寸櫟子(たべのいみきいちひこ)の太宰(だざい)に任(ま)けらえし時の歌四首

衣手(ころもで)に取りとどこほり泣く児(こ)にもまされるわれを置きて如何(いか)にせむ
舎人吉年(とねりのきね)

巻四(四九二)
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衣の袖に取りついて泣く子にもまさって悲しむ私を置いて行かれるなど、私はどうすればよいのでしょうか。
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この歌は田部忌寸櫟子(たべのいみきいちひこ)が筑紫(現代の福岡県)の大宰府(当時の地方行政機関)に赴任するときに舎人吉年(とねりのきね)が詠んだ歌。
恋人(もしくは妻?)との別れを惜しみ見送る挨拶歌となっていますが、この歌から舎人吉年と田部忌寸櫟子が交わした四首の歌が続いています。

田部忌寸櫟子については詳しいことは分かっていませんが、この歌の題詞から天武朝期あたりに大宰府に派遣された官人のようですね。
舎人吉年も朝廷に仕えていた女官かと思われます。
歌から判断するなら恋人同士ということになるでしょうか。
(あるいは舎人吉年は田部忌寸櫟子の保護者のような関係であったのかも知れませんが…)

そんな大宰府に赴任する田部忌寸櫟子に対して、「衣の袖に取りついて泣く子にもまさって悲しむ私を置いて行かれるなど、私はどうすればよいのでしょうか」との、なんとも悲しげな舎人吉年の心情が素直に表現された一首ですよね。
この二人の関係が実際にはどういうものであったのかは分かりませんが、こんなふうに自身との別れを悲しんでくれる女性がいれば田部忌寸櫟子も愛しくて仕方がなかったことでしょう。


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万葉集巻四


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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