万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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安倍女郎(あべのいらつめ)の歌二首
今更(いまさら)に何をか思はむうちなびきこころは君によりにしものを
巻四(五〇五)
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いまさらになにを物思いなどしよう。すっかりとうちなびいて心は君に寄り添っているというのに。
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この歌は安倍女郎(あべのいらつめ)が詠んだ二首の恋歌のうちのひとつ。
万葉集には安倍女郎という人物が何度か出てきて、中臣東人や大伴家持との贈答歌がありますが、すべて同じ人物であるのか不明なようです。
この歌もまた誰を思って詠んだものなのか分かりませんが、愛する人にすっかりと心を寄せてなにも迷わないとの強い思いが詠われていますね。
「物思ひ」とはあれこれと思い悩むことですが、「いったん愛すると決めたからには相手を信じ切ってもうなにも迷わない」との女性の側の強い愛情が感じられる一首ですよね。
万葉集には他にも男性に対して強い愛情を示す歌を残している女性が何人も出てきますが、この時代の女性たちは意外に強い自我と教養を持っていたのだということがこれらの歌からも想像できます。
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万葉集巻四の他の歌はこちらから。
万葉集巻四
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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