万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
（解説：黒路よしひろ）

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阿倍女郎（あべのいらつめ）の歌一首

わが背子（せこ）が著（け）せる衣（ころも）の針目（はりめ）落ちず入りにけらしもわが情（こころ）さへ

巻四（五一四）
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あなたに着てもらおうと縫っている衣の針の穴にすっかり入ってしまったようです。私の心さへも…
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この歌は阿倍女郎（あべのいらつめ）が詠んだ恋歌。
阿倍女郎という人物は万葉集の中でも大伴家持（おほとものやかもち）や中臣東人（なかとみのあづまひと）などとの間に贈答歌がありますが、すべて同じ人物なのかどうか不明なようです。

この歌はそんな阿倍女郎が詠んだ「あなたに着てもらおうと縫っている衣の針の穴にすっかり入ってしまったようです。私の心さへも…」との一首ですが、愛しい男のために縫っている衣に心まで込めた心情がよく表れていますよね。
手作りされたものに心が宿っていると感じる感覚は現在人にも十分共感できることですし、思いを込めて縫っている衣の縫い目に自身の心が入り込んだとの阿倍女郎の感性もけっして大げさなものではないと思います。
そんな、どこか女性の健気さも感じさせてくれる素敵な恋の一首ですよね。

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万葉集巻四

万葉集書籍紹介（参考書籍）
万葉集（１）〜〜（４）＆別冊万葉集辞典 中西進　（講談社文庫）　定価６３７円〜〜１１０１円（税込み参考価格）
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊＆別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの４冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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