万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴女郎(おほとものいらつめ)の歌一首 今城王(いまきのおほきみ)の母なり。今城王は後に大原真人(おほはらのまひと)の氏(うぢ)を賜へり
雨障常(あまつつみつね)する君はひさかたの昨夜(きぞのよ)の雨に懲(こ)りにけむかも
巻四(五一九)
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いつも雨を口実に来てくださらないあなたは、昨夜の逢瀬の雨に濡れて懲りてしまわれたでしょうか。
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この歌は大伴女郎(おほとものいらつめ)の詠んだ一首。
大伴女郎は大伴安麿(おほとものやすまろ)と石川郎女(いしかはのいらつめ)との娘で、最初、今城王(いまきのおほきみ)の父に嫁いで今城王を生みましたが夫と死別したのかその後、異母兄妹の大伴旅人(おほとものたびと)の妻となったようです。
ちなみに大伴家持(おほとものやかもち)の実母でもあるようで、その場合は今城王と家持は異父兄弟ということになりますね。
「ひさかたの」は「天」などにかかる枕詞ですが、この歌の場合は天からの連想で「雨」に続けると同時に、逢瀬が「久方ぶり」であったことの比喩にもなっているのでしょう。
そんな大伴女郎の詠んだ一首ですが「いつも雨を口実に来てくださらないあなたは、昨夜の逢瀬の雨に濡れて懲りてしまわれたでしょうか。」と、雨に濡れることを嫌う恋人が昨夜の逢瀬で降りだした雨に濡れたためにもう懲りて逢いに来てくれないのでは、との不安を詠った内容となっています。
万葉集の時代、雨は天から降り注ぐ畏ろしい霊気を帯びたものとして濡れることは禁忌とされていました。
雨の日などには基本的に恋人と逢うために出掛けることも出来なかったようで、この大伴女郎の相手も雨を理由に逢いに行けない日が多かったのでしょう。
とは言え、女性からこんな歌を贈られては男はどんなに濡れたくない雨の中でも大伴郎女に逢いに行きたくなったのではないでしょうか。
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万葉集巻四
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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