万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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藤原宇合丈夫(ふじはらのうまかひのまへつきみ)の遷任(せんにん)して京(みやこ)に上(のぼ)りし時に、常陸娘子(ひたちのをとめ)の贈れる歌一首
庭に立つ麻手刈(あさてか)り干(ほ)し布(ぬの)さらす東女(あづまをみな)を忘れたまふな
巻四(五二一)
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庭に立つ麻を刈り干したり布にしてさらしたりする田舎者の東国の女とはいえ、どうかお忘れにならないでくださいね。
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この歌は藤原宇合(ふじはらのうまかひ)が、赴任先の常陸国(現在の茨城県)から役目を終えて平城京に帰る時に常陸娘子(ひたちのをとめ)が贈った送別の相聞歌。
藤原宇合は新興貴族である藤原不比等(ふじはらのふひと)の子で、いわゆる藤原四兄弟(武智麿・房前・宇合・麿)の三男。
常陸娘子は、常陸の国の遊女(うかれめ)で官人などの接待をした女性だったと思われます。
宇合が陸奥守兼按察使として陸奥の国に赴いたのは養老三年(七一九)のことで、おそらくこのときに接待をしたのが常陸娘子だったのでしょうね。
この時代の遊女(うかれめ)というのは後の世の低俗化した遊女と違い、官人などの歌の相手をしたりする非常に教養のある女性が多かったようです。
この歌でもそんな遊女の常陸娘子が都へ帰ってゆく宇合に「庭に立つ麻を刈り干したり布にしてさらしたりする田舎者の東国の女とはいえ、どうかお忘れにならないでくださいね。」と、別れの歌を贈っています。
この時代、東国(あづまのくに)は奈良の都に比べて田舎の野蛮な土地とされていました。
それゆえ、都の貴族である宇合に対して「庭に立つ麻を刈り干したり布にしてさらしたりする田舎者の東国の女」と自らを卑下しながら、それでもどうかお忘れにならないでくださいねと、切ない別れの歌を詠んで宇合を見送ったわけですね。
このような歌が万葉集に集録されて現在に残っているのはおそらくそれ以前に宇合自身がどこかに記録していたからだと思われますが、きっと宇合にとってもこの常陸娘子と過ごした常陸国での時間は短いながらも貴重な思い出だったのでしょう。
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万葉集巻四
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