万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴宿奈麿宿禰(すくなまろのすくね)の歌二首 佐保大納言卿の第三子なり
うち日(ひ)さす宮(みや)に行く児(こ)をまがなしみ留(と)むれば苦しやればすべなし
巻四(五三二)
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晴れやかな日の射す宮へ奉仕に行く娘が切ないほど愛しいけれど、とめれば心苦しく、行かせればどうしようもなく悲しいのです。
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この歌は大伴宿奈麿宿禰(おほとものすくなまろのすくね)が、地方から采女として宮仕えに出仕する娘を詠んだ二首の歌のうちのひとつ。
大伴宿奈麿は佐保大納言大伴安麿(おほとものやすまろ)の第三子で、後に坂上郎女と結婚し大嬢と二嬢を生みます。
歌の内容は「晴れやかな日の射す宮へ奉仕に行く娘が切ないほど愛しいけれど、とめれば心苦しく、行かせればどうしようもなく悲しいのです。」と、宮仕えに行く娘に惚れた男の心情を詠った一首ですが、これは実際に宿奈麿がこの娘に惚れたということでしょうか。
この時代、地方の豪族から天皇への献上としてこのように自身の娘を采女として差し出す習慣がありました。
采女は基本的には天皇以外が手を出すことが許されない存在でしたので、密かに恋した相手が采女として都に上がってしまえば男はもう諦めるしかなかったわけですね。
宿奈麿は一時期、備後守として安芸や周防に赴いていたのでその時に宮仕えに行く地方の娘に惚れた可能性は充分にありそうです。
ただ、どちらかというとこの歌は娘に惚れている地方の男の立場に立って詠んだ戯れの一首のようにも感じられますが…
あるいは備後の地で歌い継がれていた地方の伝誦歌を、宿奈麿が記述して都に持ち帰ったものなのかも知れませんね。
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万葉集巻四
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県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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