万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴の坂上家(さかのうへのいへ)の大娘(おほをとめ)の大伴宿禰家持に報(こた)へ贈れる歌四首
生きてあらば見まくも知らず何しかも死なむよ妹と夢(いめ)に見えつる
巻四(五八一)
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生きていれば逢えるかも知れないのになぜあなたは「いっしょに死のうよ君」と夢に現れたのですか。
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この歌は大伴坂上大娘(おほとものさかのうへのいへのおほをとめ)が、大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)に贈った四首の歌のうちの一首。
大娘は大伴坂上大嬢(おほとものさかのうへのおほをとめ)のことで、大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)の娘。
後に家持の妻となる女性です。
題詞では「大伴宿禰家持に報(こた)へ贈れる歌」となっていますが、これは家持が贈った歌への返歌という意味ではなく、家持が大嬢の夢に出てきて語り掛けたことに報えた歌の意味です。
現代人からすると夢の内容に報えるというのはちょっと不思議な気がするかも知れませんが、万葉の時代の人々は夢に愛する人が出てくるのは相手が自分のことを思って働きかけたためだと信じており、この大嬢の場合も家持が自分の意志で大嬢の夢に現れて語り掛けたと信じてそれに報える歌を贈ったわけですね。
このあたりの夢に関する当時の人々の捉え方は非常に興味深いものがあります。
大嬢の夢の中で家持は逢えない苦しさを訴えて「二人で一緒に死のうよ」と語ったようですね。
それに対して大嬢は「生きていればまた逢えるかも知れないのになぜあなたは「いっしょに死のうよ君」と夢に現れたのですか。」と、家持の寂しい気持ちを慰めています。
とはいえ、慰めながらも「死にたいほどに逢いたい」と思っていたのはじつは大嬢も同じだったのではないでしょうか。
何時の時代も恋とは幸せなだけではなく苦しさもともなうものなのでしょう。
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万葉集巻四
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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