万葉集入門
万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

スポンサード リンク


大伴坂上郎女(さかのうへのいらつめ)の歌一首

出(い)でて去(い)なむ時しはあらむを故(ことさら)に妻恋(つまこひ)しつつ立ちて去(い)ぬ

巻四(五八五)
----------------------------------------------
家を出て帰っていくのにほどよい時は何時でもあるのではないですか。妻を恋しく思いながら去らなくてもいいでしょう。
----------------------------------------------

この歌は大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)が詠んだ引きとめ歌。
大伴坂上郎女は大伴旅人の異母妹で、家持の叔母。
家持は大伴坂上郎女の娘の大嬢(おほをとめ)を妻にしているので義理の母にもあたります。

坂上郎女は最初、穂積皇子(ほづみのみこ)と結婚しましたが穂積皇子が亡くなった後は藤原麿の愛を受けたようです。
また、藤原麿が疫病で亡くなった後に、異母兄の大伴宿禰好宿奈麿(おほとものすくねすくなまろ)の妻となって、大嬢(おほをとめ)と二嬢(おとをとめ)を産みました。
そんな非常に歌の才のある恋多き女性で、若き日の家持にも多大な影響を与えたと思われる人物です。

この歌は夫が帰って行くのを引きとめる歌ですが、特定の人物を相手に詠んだというよりは広く使える「引きとめ歌」として使った歌なのではないかと思われます。
この時代、夫婦の関係は妻の実家近くに妻の住む嬬屋を建てて、そこに男が通う妻問い婚(通い婚)が普通でした。
そして夜明け前になると男は自分の家に帰っていくのですが、この歌はそんな帰っていく男に「家を出て帰っていくのにほどよい時は何時でもあるのではないですか。妻を恋しく思いながら去らなくてもいいでしょう。」と引きとめるための歌となっているわけですね。

きっと恋上手な坂上郎女のことですから一度ならずこういう歌を詠い掛けて甘え、帰っていこうとする男の心を自分に惹きつけたのでしょう。


スポンサード リンク


関連記事
万葉集巻四の他の歌はこちらから。
万葉集巻四


万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価620円〜〜1020円(税込み)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

万葉集入門(トップページ)へ戻る

当サイトはリンクフリーです、どうぞご自由に。
Copyright(c) 2015 Yoshihiro Kuromichi (plabotnoitanji@yahoo.co.jp)


スポンサード リンク


欲しいと思ったらすぐ買える!楽天市場は24時間営業中

Amazon.co.jp - 通販