万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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大伴宿禰稲公(いなきみ)の田村大嬢(たむらのをおほをとめ)に贈れる歌一首 大伴宿奈麿卿(すくなまろのまへつきみ)の女(むすめ)なり
相見(あひみ)ずは恋ひざらましを妹(いも)を見てもとなかくのみ恋ふるはいかにせむ
右の一首は、姉坂上郎女の作
巻四(五八六)
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お逢いしなかったら恋することもなかったのにあなたを見てからのこのどうしようもない恋心をどうすればいいのでしょう
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この歌は大伴宿禰稲公(おほとものすくねいなきみ)が田村大嬢(たむらのをおほをとめ)に贈った恋歌。
大伴稲公は大伴坂上郎女(おほとものさかのうへのいらつめ)の弟で、おそらく同母姉弟だったのでしょう。
田村大嬢(たむらのおほをとめ)は大伴宿奈麿(おほとものすくなまろ)の娘で、大伴坂上郎女にとっては前妻の娘。
つまりは血は繋がってはいません(同じ大伴家の血筋なので薄くは繋がっていますが…)が大伴稲公と田村大嬢は、叔父と姪の関係になるわけですね。
まあ、この時代は血の繋がった叔父と姪の結婚も普通にありましたが。
左注によると、そんな大伴稲公から田村大嬢への恋歌を、大伴坂上郎女が代作したようです。
恋歌の代作というのは贈られた側からするとあまりうれしくはないようにも思いますが、大伴稲公自身の詠んだ歌は万葉集にも一首しか収録されていないことからあまり歌が上手な人ではなかったのでしょうね。
まあ、現代人でも恋文の代作を人に頼むこともあるので、それと同じような感じでしょうか。
ただ、この後の二人の関係がどうなったのかははっきりとしないようです。
あるいは恋文の代作してもらった恋がたいていの場合失敗してしまうように、大伴稲公から田村大嬢の関係も上手くはいかなかったのかも知れませんね。
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万葉集巻四
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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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