万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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山口女王(やまぐちのおほきみ)の大伴宿禰家持に贈れる歌五首
物思(おも)ふと人に見えじとなまじひに常に思へりありそかねつる
巻四(六一三)
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物思いを人にさとられないようになまじ心を抑えて、常に物思いしています。
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この歌は山口女王(やまぐちのおほきみ)が大伴宿禰家持(おほとものすくねやかもち)に贈った五首の恋歌の内のひとつ。
山口女王については詳しいことは何もわかっていないようですが、大伴家持に贈った恋歌がこの五首の歌の他にももう一首万葉集に集録されています。
この歌はそんな山口女王の「物思いを人にさとられないようになまじ心を抑えて、常に物思いしています。」との物思いのつらさを詠った一首ですが、恋の物思いを人にさとられまいと隠せば隠すほど心の中でひとり苦しむことになるという経験は現在人にも十分共感できますよね。
万葉の時代の人々は自分の名が恋の浮名として人々の噂に立つことを極端に嫌っていましたが、その反面で、恋の相手には自分の思いを赤裸々に伝える大胆さも兼ね備えていました。
山口女王のこの一首も他人にさとられることは恐れながらも、想い人である家持自身には自分の恋の切なさを包み隠さず訴えていて読む者の心を惹きつける魅力を持っているように思います。
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万葉集巻四
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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