万葉集入門
日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)
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池辺王(いけべのおほきみ)の宴(うたげ)に誦(うた)へる歌一首
松の葉に月は移(ゆつ)りぬ黄葉(もみぢば)の過ぐるや君が逢はぬ夜の多き
巻四(六二三)
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松の葉にさす月の位置も変わって行きました。黄葉のように去って行ったあなたに逢わない夜がずいぶん経ちます
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この歌は池辺王(いけべのおほきみ)が宴(うたげ)の席で誦(うた)った一首。
池辺王は葛野王(かどのおほきみ)の子で、大友皇子の孫。
池辺王は男性ですがこの歌は「松の葉にさす月の位置も変わって行きました。黄葉のように去って行ったあなたに逢わない夜がずいぶん経ちます」と、女性の立場に立って詠ったものとなっています。
「黄葉のように去って行った」とは「黄葉の散るように」との意味で、目の前から去って消えてしまったとの失恋の歌なのでしょうね。
ただ、この歌は実際には池辺王が作った歌ではなく、どうやら有名な伝誦歌を宴の場の雰囲気に合わせて誦んだもののようですね。
もとの歌の作者は誰なのか不明なようです。
きっと宴席の庭の松の木の上に綺麗な月の移ってゆくのが見える、そんな夜だったのでしょう。
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万葉集巻四
万葉集書籍紹介(参考書籍)
万葉集(1)〜〜(4)&別冊万葉集辞典 中西進 (講談社文庫) 定価637円〜〜1101円(税込み参考価格)
県立万葉文化舘名誉館長でもある中西進さんによる万葉集全四冊&別冊万葉集辞典です。
万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。
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