万葉集入門
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日本最古の和歌集「万葉集」の解説サイトです。
分かりやすい口語訳の解説に歌枕や歌碑などの写真なども添えて、初心者の方はもちろん多くの万葉集愛好家の方に楽しんでいただきたく思います。
(解説:黒路よしひろ)

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八代女王(やしろのおほきみ)の天皇に献(たてまつ)れる歌一首

君により言(こと)の繁(しげ)きを古郷(ふるさと)の明日香(あすか)の川に潔身(みそぎ)しに行く
一尾(あるび)に云はく、龍田越(たつたこ)え三津(みつ)の浜辺に潔身しにゆく

巻四(六二六)
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あなたによって恋の噂が立ってしまったのを古里の明日香の川で清めに行ってきます。
一尾に云はく、龍田山を越えて三津の浜辺に清めに行ってきます。
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この歌は八代女王(やしろのおほきみ)が聖武天皇(しようむてんわう)に献上した一首。
「君により」は「君に寄り添って」の共寝の意味も掛けてあるのでしょう。

「あなたによって恋の噂が立ってしまったのを古里の明日香の川で清めに行ってきます。」と、天皇との恋の噂が立ってしまったのを明日香川で清めて来ると詠っていますが…
八代女王は一説によると聖武天皇の妻だったとも言われています。

聖武天皇の妻としては藤原不比等(ふじはらのふひと)の娘である光明子(こうみようし)が真っ先に浮かびますが、あるいは当時絶大な権力を誇った藤原氏との争いを恐れて八代女王は自ら身を引いたのかも知れませんね。
奈良の都に残ればいつまでも噂が消えないために、故郷の明日香の地に帰って行ったのではないでしょうか。

この歌はそんな失意のうちに明日香の地へ帰ってゆく八代女王が天皇に献上したものなのでしょう。

歌の後に付けられた「一尾」とは「後半」といった程度の意味で、この歌の下の句が一説には「龍田越(たつたこ)え三津(みつ)の浜辺に潔身しにゆく」であったことを示しています。
あるいはもともと「君により言(こと)の繁(しげ)きを龍田越(たつたこ)え三津(みつ)の浜辺に潔身しにゆく」という歌が伝誦歌としてあったのを、八代女王が自身の状況に合わせて詠み変えたのかも知れませんね。
そんな八代女王と聖武天皇を取り巻く歴史の背景を考えながら詠むと、なんとも深い味わいの感じられる一首ですよね。


明日香川。



龍田山。


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万葉集巻四


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万葉集のほうは原文、読み下し訳、現代語訳、解説文が付けられていて、非常に参考になりこの4冊で一応、万葉集としては充分な内容になっています。
他の万葉集などでは読み下し訳のみで現代語訳がなかったりと、初心者の方には難しすぎる場合が多いですが、この万葉集ではそのようなこともありません。

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